【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
 本発明は、アボカドの収穫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は産地(メキシコ中西部)でアボカドの樹木から採取されたアボカド(果実部)を
出荷加工場まで輸送し、その出荷加工場で加温追熟した後、パッキングして消費地に輸送
し、消費者に提供されるアボカドの収穫方法に係り、さらに詳しくは、適度な熟度に至っ
たアボカドを効率的に樹木から採取できると同時に、採取したアボカドの食味を良好に保
つことができるアボカドの収穫方法に関する。
【0003】
アボカドはベースとなる木に、アボカドの苗木を接ぎ木し、自然堆肥からなる有機肥料で
土壌を改良し、湧水などを集めた灌漑設備の整備された農地に定植し、定植から5年以上
を経過したのちにアボカドの収穫が可能となる息の長い生産品である。
【0004】
アボカドの樹木の平均寿命は40~50年程度であり、同じ樹木で年に4回(栽培地の標
高などにより、若干の変動は考えられるが、おおよそ1月、4月、7月、10月の3か月
置き)開花が見られ、開花後にその開花部に果実部(アボカド)が生成され、開花後約8
~10か月程度を経てアボカドの表皮の一部が黒色に変色する。アボカドの原産国である
メキシコの中西部の産地の年間平均気温は24~29℃程度で、昼夜の温度差は10~1
5℃の環境下にあり、1年を通してアボカドの収穫ができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-330625
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した通り、アボカドの樹木では、各開花時期の違いで同じ樹木であっても熟度の進ん
だものとそうでないアボカドの両方の果実が収穫前に樹上に混在することになり、採取時
にはアボカド個体の外観を丁寧に観察してアボカド内部の熟度を正確に判断しなければな
らず、そのため相当の熟練者でなければ、簡単に採取時期の適否の判断をすることは困難
であった。
特に一部表皮が黒色に変化したか、そうでないかという視覚による判断は熟練者であって
も迷うところであった。
【0007】
 本発明は、上記の問題点をすべて解消し、アボカドの採取を効率的に行えるようにした
収穫方法を提供し、その結果採取作業の熟練者でなくても、採取に適した熟度に至ったア
ボカドであるか否かを瞬時に判断することができ、これにより採取作業の効率化を図るこ
とができると同時に、採取されたアボカドの食味を良好に保つことが可能となるアボカド
の収穫方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
 上記目的を達成するために請求項1の発明は、年に4回開花するアボカド樹木において、
各開花時に当該開花したアボカドの花と小枝とを接続する茎の部分に同一の識別標識を設
置し、その識別標識は、少なくとも過去3回に設置した識別標識と相互に区別できる4種
の識別標識で構成され、これら全4種の識別標識のなかで、開花時から8~10か月を経
過した固有の識別標識が設置された茎に結実したアボカドを一斉に採取し、この一斉採取
を順次繰り返し継続的に行うようにしたことを特徴とするアボカドの収穫方法である。
【0009】
 請求項2の発明は、年に4回開花するアボカド樹木において、各開花時に当該開花した
アボカドの花と小枝とを接続する茎の部分に同一の識別標識を設置し、その識別標識は、
少なくとも過去3回に設置した識別標識と相互に区別できる4種の識別標識で構成され、
さらに同一開花時のアボカドの花であって、樹木の内部に位置する内成アボカドと、樹木
の外表面に位置する外成アボカドとで相互に区別できる識別標識で構成され、これら全8
種の識別標識のなかで、8~9か月を経過した固有の識別標識の付された茎に結実した外
成アボカドを一斉に採取し、続いて9~10か月を経過した固有の識別標識の付された茎
に結実した内成アボカドを一斉に採取し、この一斉採取を順次繰り返し継続的に行うよう
にしたことを特徴とするアボカドの収穫方法である。
【発明の効果】
【0010】
 請求項1及び請求項2に係る発明のアボカドの収穫方法によれば、アボカドの収穫作業
に従事して間もない者であっても、識別標識を目印とするだけで、画一的に熟度が適切な
状態のアボカドのみを迷うことなく採取することができ、採取されたアボカドは熟練者に
より採取されたアボカドと品質(熟度)は同程度であり、効率的なアボカドの収穫が可能
となる優れた効果がある。このような均質なアボカドの採取により、その後の熟成も均質
となり、食味の状態が良好となる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
 以下、本発明に係るアボカドの収穫方法の一実施の形態を説明するが、本発明はこれら
の実施の形態に制限されるものではない。
【0012】
前記した従来のアボカドの収穫方法では、アボカドの表皮の一部が黒くなったものから採
取することになるが、一年間に4回開花するアボカドの樹木には、年四回の開花時期の異
なるアボカドが混在しているため、一部黒くなったアボカドかそうでないアボカドかは、
一つ一つ目を近づけて丁寧に観察する必要があり、一部が黒くなっている可能性の全くな
いものまで、採取適否のための観察対象に加えられてしまうという著しく不経済な採取チ
ェック行動が採られていた。
【0013】
 本発明では、開花時期ごとにグループ分けされた同一の識別標識が設置されるため、同
一開花時期のアボカドは他の識別標識のものと区別することが可能となり、識別標識の目
印で熟度の進行が均質的なものをまとめて採取できるという結果となる(請求項1)。
【0014】
請求項1のアボカドの収穫方法の手順を説明すると、おおよそ1月、4月、7月、10月
の3か月置きに開花するアボカド樹木において、樹木上で開花を確認した直後に、当該開
花部と小枝とを接続する茎部付近に同一の色彩、模様、外観、素材等で形成された決めら
れた識別標識を設置する。この識別標識は、約3か月ごと、前の識別標識とは区別が可能
となるものに装いを変えられて、新たな開花部と小枝とを接続する茎部付近に設置される。
【0015】
アボカドの果実は、開花後8~10か月程度で収穫に適した熟度となるため、1年以上ア
ボカド樹木上に残されることはなく、同一のアボカド樹木上ではその時点での過去4回の
開花時期に設置された識別標識のみが残されていることとなり、この範囲で各開花時期が
判明すれば、開花時期の記録データをもとに採取時期のおおよその判定が可能となり、実
際の採取は熟練者が最終判定人となるべく現場の状況に合わせて最終判断を行う。一度採
取OKの判断が下されれば、同一樹木及び、周辺に位置する樹木でのアボカドの一斉採取
が、熟練者でなくとも簡単に行えるようになる。この一斉採取は、順次繰り返して継続的
に行われる。
【0016】
請求項2のアボカドの収穫方法の手順を説明すると、請求項1の場合と同様に、おおよそ
1月、4月、7月、10月の3か月置きに開花するアボカド樹木において、樹木上で開花
を確認した直後に、当該開花部と小枝とを接続する茎部付近に同一の色彩、模様、外観、
素材等で形成された決められた識別標識を設置する。この識別標識は、約3か月ごと、前
の識別標識とは区別が可能となるものに装いを変えられて、新たな開花部と小枝とを接続
する茎部付近に設置される。
また請求項2の発明にあっては、さらに同一開花時のアボカドの花であって、樹木の内部
に位置する内成アボカドと、樹木の外表面に位置する外成アボカドとで相互に区別できる
識別標識を設置する(全8種)。
【0017】
外成アボカドは、直射日光を強く浴びるため比較的成長が早く、それと比べて内成アボカ
ドは直射日光の影響が弱くなるため、比較的成長が遅いという結果となる。
これら全8種の識別標識のなかで、8~9か月を経過した固有の識別標識が設置された茎
に結実した外成アボカドをまず一斉に採取し、続いて9~10か月を経過した固有の識別
標識が設置された茎に結実した内成アボカドを一斉に採取し、この一斉採取を順次繰り返
して継続的に行う。
【0018】
 ここで、アボカドの樹木につける識別標識としては、耐候性素材で形成され、約1年程
度は直射日光を浴びたりしても変色、破損、毀損などを来たさないという識別標識として
最低限求められる性質を保有していることが求められる。
【0019】
 識別標識の具体例としては、布製、合成樹脂製のテープ体や紐体で、各種の色彩に分け
られているものとか、各種のデザインを表示したものなどが好適である。このテープ体や
紐体に、心材として針金状の金属を配しておくと、取り付けの作業が効率的に行える。
 さらにひっかけるためのフック部を事前に備えるようにしたリボン体なども使用可能で
ある。
 その他、ペイント塗料、スプレー塗料などで識別標識を形成することも可能であり、こ
の場合にはペン型(筆型)塗布具、ガン型塗布具などの使い易い塗布具を使用すると使用
性が向上する。
【0020】
ここで識別標識の設置(取り付け又は形成の方法)を説明すると、アボカドの樹木に開花
が認められた段階で、樹木上の花などを傷つけないように丁寧に同一グループとなる識別
標識を、上記した個所に一斉に設置(取り付け又は形成)する。
識別標識を設置した後は、その箇所は採取時期までそのまま放置されるが、その識別標識
は開花時期が判明しているため、開花後の一定期間経過の目印となり、大変重宝なものと
なる。
一本の樹木に、年4回開花するアボカドであればこそ、大変有効な収穫方法を実現できる
決め手となる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のアボカドの収穫方法は、アボカドを収穫する現場において利用可能である。